隠されてゆく想い




俺はあいつを抱きしめて言った。

「好きだ」と・・・。

だが、その言葉は否定された。

物凄く傷ついたような瞳で・・・。



だから、代わりを作った。

そんな事で満たされるのは俺だけなのに―――・・・







「カイくん?」
「・・・」
「カイくん?どうしたの?」
本を読んでいた絵里奈が、フッと俺に話しかけてきた。
が、俺は何も返事をすることが出来なかった・・。
ボーっとしてしまった俺の目の前で、絵里奈が手を振る。

「!あ、悪い・・・なんでもない・・・」
「そう?なら良いけど・・・?」
そう言い、絵里奈は視線を本に戻した。
そんな、絵里奈の反応が俺は寂しくなって、絵里奈に話しかけた。


「なぁ?絵里奈・・・」
「ん?」
「好きだぞ」

俺の言葉に絵里奈は顔を赤くして言った。

「な、何を急に・・・ど、如何したの?」
「お前はどうなんだ?」
「・・・わたしは・・・」
俺の言葉に、絵里奈は物凄く困ったような顔をした。

ほら、お前は、いつもそうやって、その場を逃げ切る方法を考えている振りをする・・・。

頭の良い彼女なら、直ぐに思いついてしまうのに・・・。


「答えろよ。絵里奈」
「私は、カイくんのことが好きよ。誰よりも・・・」
「本当か?」
「えぇ」
「・・・なら良いんだ」
そう言い、絵里奈を抱きしめる。
当の絵里奈は少し抵抗の色を見せたが、すぐ大人しく俺の腕に納まる。





そう、「代わり」と言うのは彼女。
神橋絵里奈だった。


彼女と付き合い始めてもう早くも二ヶ月が経とうとしている・・・。

二ヶ月前。俺は最初、絵里奈ではなく、夕鶴に告白をした・・・。
「好きだ」そう言った・・・でも・・・


『お前が俺の事を好きなのは、俺に絵里奈の面影を重ねているだけなんだろ?
そうならお前の気持ちを受け取れない・・・』
そう、はっきりと夕鶴の口から出た言葉が忘れられない・・・。

同時にその時の夕鶴の傷ついたような瞳も―――・・・



確かに俺は、前々から絵里奈に少し興味を持ってはいた。
だが、それは恋愛感情とは程遠いものに過ぎなかった。

絵里奈は頭も良いし、なによりもスタイルも良くて容姿が良い。
通常の男子なら特別な意味がなくても彼女に興味を少し位持つだろう。
ただ、それだけだった・・・
俺が絵里奈に持つ感情はそれだけであって、
俺が本当に好きなのは夕鶴だけだった・・・。


それでも、夕鶴に否定され、俺はそれを言い返せる事が出来なかった――・・・。


そんな時、俺に優しく声を掛けてくれたのが絵里奈本人だった。
彼女には何の非もないが、それでも、俺の気持ちが夕鶴に伝わらなかったのは
彼女の所為だと、その時の俺は勝手に決め付けてしまっていた。




だから、彼女を利用してやろうと想った。



彼女は都合よくも夕鶴と同じ黒髪を持ち、それと同時に何処か夕鶴の面影が感じる・・・。
そんな彼女を夕鶴の代わりにしてやろうと想った。


勿論。そんな事を思っていたなんて、知ったら彼女が傷つくだろうとは解っていた。
それでも、俺は如何しても代わりが欲しかった―――・・・



そして、俺は行動に出た。



しかし、絵里奈は想った以上に頭の良い奴で、
俺が自分を利用しようとしている事に感づいていたようだ。

『貴方が私の事を好きだと言うのは夕鶴くんの代わりが欲しいだけでしょう?
そんな代わりなんて・・・私、なりたくないの!』
それが、彼女の答えだった。

それでも、せっかくの好都合の獲物を逃がしはしないと俺は彼女を口説き、
お人よしの彼女はそれでも疑っているようだが、最終的に折れてくれた。


順調に行っている「計画」に俺は少しばかりか胸を痛ませながらも彼女と共にこの二ヶ月間を過ごしてきた。

そして、この二ヶ月間の間で俺の心に変化が起こった。


今まで嫌いだった絵里奈が逆に愛しくなったのだ。
夕鶴への想いなど忘れてしまいそうに―――・・・・

何故そんな心変わりが起こったのかは俺自身でも解らない・・・。
だが、一つ解る事がある・・・。
それは、彼女が俺に向ける優しい微笑みが、俺の心の中の氷を少しずつ溶かしていった事だ。


そして、気付いた時には俺は、彼女を・・・
絵里奈を愛しく感じるまでになっていた。


「なぁ、絵里奈・・・」
「なぁに?」
「俺は、お前の事が好きだ・・・誰よりも・・・」
グッと、絵里奈の細い体を抱きしめる力を強くした。
夕鶴よりも一回り程小さい絵里奈の体に
何故か一瞬、夕鶴の面影を見てしまいそうだった。

それと同時にまだ夕鶴への想いを捨て切れていないのだと思ったが、
そんな気持ちを振り切るように俺は言葉を続けた。

「だから・・・俺から離れるなよ・・・」
「カイくん・・・えぇ。勿論よ」
少し間を取った絵里奈から出てきた答えに俺は安心を覚える。


「絵里奈・・好きだ。誰よりも・・・」
「私もよ・・・カイくん」
俺の言葉に彼女は俺の背中に腕を回し抱きしめ返す。
絵里奈の答えと行動に俺は薄く微笑むと、彼女の唇に自分の唇を重ねた。
当の絵里奈は何の抵抗もせずにその口付けを受け止めた。


その口付けは、甘く・・・・
そして、切なく感じた。

それでも、これで良いんだと・・・
俺はそう思った。


何れは、彼女は本当の意味で俺のものになる・・・。
そして、俺も、彼女のものになるだろう・・・

だって、俺が愛しく思っているのは・・・・
俺にとって愛しい存在なのは・・・
榊原夕鶴ではく、神橋絵里奈と言う少女なのだから―――・・・・。


だから・・・これで・・・

これで良かったんだよな・・・?

絵里奈―――・・・・
                         <END>

<あとがき>

2007年初の読みきり第二段です。
これも、コレで駄目丸出しです・・・。(切腹
とりあえず。この話しでは、カイと絵里奈はくっ付いてます。
久々に書いた様な気がします・・・NL・・・。
ずっと、BLしか書いてないし、偶にはNLも良いかな・・・?
と、思ってたりします。
ではでは、読んで下さって有難う御座いました!
2style.net