恋愛進化論




俺は別に彼の事など如何にも思って居なかった。
ましてや恋愛感情なんて・・・
確かに同姓同士で付き合っているなんて言うのは俺自身も目の前で見ているし、
別に偏見があるわけではない・・・
この世界にそんなのだっていくらでもあるとも思っている。
ただ、自分には程遠いものだと・・・そう思っていただけ。
なのに、まさか・・・まさかだよね・・・?






それは本当に突然な事だった。
とある平凡な放課後、夕鶴達四人は駅前にあるファミリーレストランで
いつもの様に話をしていた。
そんな時だった。

「なぁ。カイ、夕鶴・・・君達は男同士で付き合ってて
気持ち悪いとか・・自分たちが変だとかは感じないのかい?」
突然飛鳥の口から出てきた言葉に、夕鶴とカイは飲んでいたジュースを
噴出しそうになり、
絵里奈は驚きの余り飛鳥を見つめる。

「いきなり何を言い出すんだよ?」
先に口を開いたのは夕鶴だ。
カイや絵里奈は何も言わず飛鳥の方を見つめるだけ。
しかし、夕鶴の言葉に飛鳥は何か困っている様な表情をしているが何も言わない。
暫く沈黙が走る。
そして、飛鳥が沈黙を破った。

「いや、別に君たちを偏見している訳じゃないんだよ。
俺だって、君たちの事見てきているし、
それにこの世にはそんな人たち沢山居るって思っているし・・・」
「じゃぁ、なんで行き成りそんな事を言ったりするんだよ?」
「そ、それは・・・いや、ちょっと気に成っただけだよ」
カイの問いに答えた飛鳥は何処か焦っているような、隠しているような・・・
そんな気が三人はした。
そして、飛鳥は続ける。

「だってほら、普通恋愛と言うのは異性の間で事が一般的だからさ・・・
やっぱり、同姓同士ってなんか変なのかなぁ・・とか・・・」
「でも私、同姓同士で恋愛があっても変だとも可笑しいとも思わないわよ?」
「!絵里奈ちゃん・・・」
焦るようにそう口にする飛鳥に絵里奈が口を開いた。

「だってそうでしょう?異性に友情があるのと同じように、
同姓同士で恋愛があっても可笑しな話ではないと思うわよ。
現に同姓同士の恋愛がこの世に存在するから
夕鶴くんとカイくんの二人は付き合っているだもの・・・ね?そうよね、カイくん、夕鶴くん」
「あ、あぁ・・・」
「そうだな」
絵里奈の言葉に夕鶴とカイは顔を見合わせそう言う。
そして、夕鶴が口を開く。

「っと、言うか・・・飛鳥、お前如何したんだよ?
行き成りそんなこと言い出して、お前らしくも無い・・・」
「!いや、何でもないよ・・・本当に・・・」
「本当か?お前、俺たちに何か隠してないか?」
「いや、だから・・・本当に何にもないってば」
夕鶴とカイからの問い攻めに飛鳥はそう返事を返す。
しかし、彼が何か隠し事をしているのは一目瞭然だ。
さすがの問い攻めに逃げ場をなくした飛鳥は何かを思い出したかの様に口を開く。

「あ、すまない・・俺。用事あるから先に帰るね」
「え?飛鳥?」
「じゃ、また明日」
そう言い、三人の言葉を聞く前に早歩きでその場を立ち去った。



自宅に足を向けている時でも忘れられない。
あのときの事・・・
あの時の声と言葉・・・。

『お前が好きだ』


耳の中で響くその言葉。
忘れたいのに忘れられなくて・・・

ぎゅっ、と、その瞳を閉じる。


信じられなかった。
自分にとってそんな事程遠いものだと思っていたから尚更信じられない。
夕鶴とカイを見ている飛鳥だ。
同姓同士の恋愛に偏見なんか少しも持っていないが、それでも、
まさか、自分が同じ男に告白されるなんて・・・
考えた事もなかったし信じられなかった。

混乱する頭を抱え、ため息をつく。


如何してこんな事になってしまったのだろうか・・・
理由はこの日の昼休みまで遡る。



■□■□
クラスメイトである大和に話があるからと、屋上へ呼び出された。
そして、飛鳥は驚くような事を大和から聞く。

「で、伊集院。話って何だい?君が俺に用なんて珍しいね」
「篠崎・・・」
「何だい?」
突然真剣そうな表情で迫られ、飛鳥は驚き後ずさりをする。
しかし、後ろにはフェンスがあり逃げ場を失う。
ガシャンッ・・・と、強く両腕をフェンスに突き、飛鳥の逃げ場を完全に奪う。

「ちょ、伊集院・・・?」
「篠崎・・・」
「い、一体何の冗談なんだい?」
焦る飛鳥に大和は彼の顔を覗き込むと口を開く。

「これが悪ふざけとも冗談だとも思うか?」
「悪ふざけじゃなかったら、一体何なんだい?」
顔を歪めてそういう飛鳥に大和は真剣な表情で言った。

「まだ解んねぇのか?俺は・・・篠崎、お前の事が好きなんだよ」
「・・・え?」
大和の言った言葉が理解できなかった。
今、彼はなんと言った?
自分の事が好き?・・・大和が、自分を・・・?
混乱し、戸惑いを隠せない飛鳥。


そして・・・


「!!」
驚きの余り飛鳥は声が出せなかった。
一体自分の身に何が起こったのかも理解できない。
ただ、その身に感じるのは、自分を抱きしめる強い力と大和の体温・・・。
大和が飛鳥を抱きしめたのだった。

「初めて会ったときからお前の事が好きだった!だから、俺と付き合え!!」
「そ、そんな・・・」
「飛鳥・・・」
行き成り耳元で優しく名を呼ばれ、驚いて顔を上げた瞬間だった。

「!・・・んっ」
大和が飛鳥の唇を自分の唇で塞いだ。
触れるだけの口付け・・・。
それだけで、飛鳥の頭の中は真っ白になった。
一体何をされたのかも飛鳥はすぐ理解できなかった。
唇から感じる柔らかい何かが大和の唇だというのに気づくのに時間が掛かった。

そっと、唇を放され大和が再び飛鳥の顔を覗き込み口を開く。
「これで冗談だとは思わないだろ?」
「な・・・なんでこんな事・・・・?」
未だ混乱する思考の中、飛鳥はそう言った。

「何度も言わせるな・・・お前が好きだからだ」
真剣な目で自分を見つめる大和に飛鳥は何も答える事が出来なかった。


□■□■

あの後、どうやってあの場から離れたのかは覚えていない。
ただ、混乱しながら「少しだけ考える時間を欲しい」と大和にそう言った事だけは覚えている。


「・・・はぁ」
軽く溜息を付くとベッドにその身を投げた。
視界に広がるのは真っ白い自室の天井。
何故大和が自分に告白してきたのかが未だに解からない。
確かに、男同士で告白したとか、されたとか言う話は稀に耳にする事はあった。
事実、自分の友人であるカイと夕鶴だって男同士で付き合っているわけで・・・
夕鶴だって、カイと付き合うずっと前から同じ男に好意を抱かれ、
告白されている現場などもしょっちゅう目にしていた。
しかし、それは夕鶴が極度の女顔でそれで居て美人だからなのだろう・・・そう、飛鳥は他人事の様に思っていた。

しかし、今日大和から告白を受けたのは夕鶴でも他でもなく、飛鳥自身だ。
何故自分なのだろうか?
そう何度も飛鳥は思ってしまう。
たとえば、自分が夕鶴のように女顔だとか彼のように魅力があるのなら、
まだ説明は付くかもしれない・・・
しかし、自分は夕鶴のように女顔でもましてやなにか魅力がある訳でもない。
そんな自分に何故大和は・・・・?


考えても仕方がないことだとは解ってはいる。
しかし、頭に浮かぶのは今日起こった出来事と、大和のあの真剣な視線。
ゆっくりと飛鳥はその瞳を閉じた。
もう寝てしまおう―――・・・
眠ってしまえばもう考えなくてすむから・・・。





■□■□
次の日の放課後、生徒会の仕事が終わり、誰も居ない教室で飛鳥は一人窓の外を眺め考え事をしていた。
否、実際は考え事などしていなかった。
そんな時、誰が教室の中へ入ってきた。
しかし、飛鳥はそれに気づいていないのか、窓の外に視線を向けたままだ。
近づく足音に漸く人の気配に気づき、飛鳥が振り向こうとした瞬間だった。

「!」
後ろから抱きしめられ、飛鳥の行動が一瞬固まる。

「篠崎・・・」
「・・・伊集院」
名前を呼ばれ顔を上げるとそこには大和が居た。
そして大和が口を開く。

「昨日の答えは出たか?」
「・・・昨日、ずっと考えてたよ。どうして俺なんだろう・・・ってね」
「?」
飛鳥の言葉に大和は不思議そうな顔をし、一度飛鳥を放してやる。
体を放され、飛鳥は大和の方を向くと続ける。

「俺は夕鶴みたいに女顔ではないし、彼の様に魅力も何もない・・・
そんな俺を如何して君が好きになったのかが今でも理解できないよ」
「それ、答えになってねぇぞ?」
「だから・・・先に答えるのは君の方だろう?伊集院」
「俺?」
「そうだよ」
飛鳥の言葉に大和は軽く溜息を吐くとその口を開いた。


「篠崎、お前は何か勘違いしているようだが、お前がもしも榊原なら俺はお前の事を好きになってなかったぜ」
「っと、言うと?」
「お前が篠崎飛鳥だから俺はお前の事を好きになったという事だ・・・それに」
「!」
「お前だって榊原に負けねぇ位、綺麗な顔だぜ?」
そっと、飛鳥の掛けている眼鏡に手を伸ばすと彼から眼鏡を奪いそう言う。
余りの出来事に飛鳥は驚き大和を見つめる。

眼鏡を掛けている時と雰囲気が違って見える飛鳥の顔。
普段の眼鏡を掛けている時だと余り気づかないが、
飛鳥の顔は本当に整った綺麗な顔をしている。
紫色をした切れ長の飛鳥の瞳。
夕鶴とはまた違う凛とした雰囲気。
確かに夕鶴は凄く綺麗な顔立ちではあるが、
きっと大和からすれば夕鶴よりも飛鳥の方が綺麗に見えているのだろう・・・。

大和はずっと飛鳥が欲しかった。
高校に上がって初めて飛鳥を見たときから・・・。


「だから、俺は別にお前を榊原の代わりにしようとかそういう意味じゃなく、
本当にお前の事が、篠崎飛鳥が好きだからお前に告白をした・・・それじゃ駄目か?」
「・・・そんなの、答えになってないよ・・・もっと他の理由はないのかい?」
そう困ったかのような口調で言う飛鳥を大和は再び抱きしめ、彼の耳元で囁いた。

「人を好きになる事に理由なんて元々ないんだぜ・・・俺の飛鳥」
「・・・・君はずるいよ・・・」
「そうか?それでもお前ほどじゃねぇと思うがな」
「・・・」
大和の言葉に飛鳥は暫く黙り込むが、少し間を取ると飛鳥が大和の背中に腕を回し言った。


「悔しいけど、今回は君の言葉受け止めるよ・・・」
「素直じゃねぇな・・・ま、そこも可愛いんだがな」
「・・素直じゃない事は君だって同じだろ?」
ムッとしながらそう言う飛鳥に大和は頬を緩めると、
彼の顎に手を添えその唇に己のものを重ねた。

飛鳥も何も抵抗せず大和からの口付けをそのまま受け止める。





まだまだアンバランスだけど、これからバランスを取っていけば良い。
それが、俺達のやり方だから―――・・・。

赤い夕焼けの日差しが二人の居る教室を赤く染め上げた。


                         <END>

<あとがき>

本当に久々の読みきりです。
な、なんだかとんでもない物を書いてしまったようですね・・・私。
しかも、夕鶴受じゃない他のカプで・・・(苦笑
もう甘すぎて、さ、砂糖吐きそう・・・・(砂糖通り越して吐血しそう;
っと、言う事で初の大和×飛鳥でしたが、如何でしょうか?
こんな感じですが、これからも頑張りたいと思います!
(もちろん、メインの夕鶴受もね・・・w(笑
最後までお付き合い、有難う御座いました!
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