思春期のど真ん中
もう、どのくらい前からだろう・・・?
君を唯の友達として見ることが出来なくなったのは・・・。
それは、つい最近の事の様にも、
かなり前からのことの様にも感じる―――・・・・。
これを、人は「恋」というのだろうか・・・・?
日差しが次第に強くなり、木々の葉も深緑色に彩った初夏―――・・・。
学生達は、長い夏休みをまだ来ないのかと、心待ちにしていた。
そんなある日の出来事だった・・・。
「あっち〜・・・。今日も暑いな・・・」
水道場で水を飲みながら、カイが口を開いた。
「ほんと・・・。もうやっていけねぇよ・・・こんな暑さじゃ身体が持たねぇよ」
一緒にいた友達二人も同じような言葉を発した。
カイは顔を上げると、辺りを見渡し、一人足りない事に気が付く。
「あれ?そういえば、夕鶴は?」
「夕鶴?夕鶴なら、先に教室戻るって言ってたぞ。
あいつ。夏苦手だからなぁ・・・今日もだるそうにしてたし・・・」
カイの問いに友人の一人が口を開いた。
「にっしても、ほんと。あいつは顔だけじゃなくて、体質も女だよなぁ・・・。
夏が苦手なんて・・・まるで、か弱い女の子みたいだよな」
「だよな!俺、去年夕鶴と始めてあった時、女と間違えたぐらいだし・・・。
顔も唯の女顔だけじゃなくて、美人だしなぁ・・・
男にしておくには勿体無いよなぁ・・・な!カイもそう思うだろ?」
そんな、友人二人の会話に、カイは自然的に夕鶴の顔を思い浮かべる。
確かに、夕鶴は物凄い女顔だし、物凄く美人だ・・・。
普段学校では後ろで縛っている肩下辺りまである髪も、
それを解くと風に靡き、その姿が物凄く綺麗だったのを今でも覚えている・・・。
そして何よりも、強さと一途さを表している、強い眼差し。
その眼差しがカイには、綺麗だと、愛しいとさえ思えた・・・。
女顔な挙句、物凄い美人で、口は悪いが成績は常にトップクラス。
同じ学年の裏では、彼を狙っている輩も少なくはない。
だけど、必ず手に入れたい―――・・・
なにがあっても―――・・・。
「おい。カイ・・・カイ!!」
友人に肩を揺らされ、カイは我に戻る。
「!あ・・あぁ・・悪い・・・そうだよな・・・」
カイの返事の仕方に友人の一人が、カイの顔を覗き込みながら問う。
「なんだ?カイ・・・お前、最近変だぞ?」
「え?」
「あぁ。なんか、最近のお前って、夕鶴の話になるとボーっとしちゃってさ・・・
あ!まさか、お前・・・夕鶴のことが好きなんじゃないか?」
「ばっ!バカ!俺は男で、夕鶴も男だぞ!?なんで俺が夕鶴を好きになんなきゃ・・・」
「だ、だよな・・・」
焦った様なカイの答えに友人二人は、納得したような、まだ疑っているような、
曖昧な言葉を発する。
そんな時、三人に近付く足音がしたが、当の三人はそんなことに気が付かない。
そして―――・・・・・。
「俺がなんだって?」
「げっ!ゆ、夕鶴・・・・」
「「!?」」
何気なく掛けられた声に、三人は振り向き、友人の一人がその声の持ち主の名を呼ぶ。
その視線の先には、夕鶴が立っていた。
どうやら、話を全部聞かれてしまったらしい・・・。
当の夕鶴は、かなり迷惑そうな顔をしている。
「話は全部聞かせてもらった・・・・。
翔太、慶介。てめぇら、人がいない事をいい事に、
人の変な噂話なんかしてんじゃねぇよ!」
「う・・・悪かった・・・」
「ご、ごめん・・・夕鶴・・・」
二人が謝ると、夕鶴はカイのほうに振り向いた。
「カイ、貴様もだ・・・。
貴様が俺の事を如何思ってるのかは俺には関係の無い話だが、
人を使って変な事を考えるなっ!解ったな?」
「あ。あぁ・・・悪い・・・」
カイの返事を聞くと、不機嫌そうに夕鶴はその場を立ち去った。
そんな彼を、三人は唖然としながら見送る。
「あ〜ぁ・・・夕鶴を怒らせちゃったみたいだな・・
ありゃぁ、機嫌取るの大変そうだ・・・」
「だよな・・・俺、宿題を写させてもらおうって思ってたのに・・・」
「いや。それはだめだろ・・・やっぱ・・・」
「って・・あれ?カイは・・・?」
「あ!いつの間に!?」
二人は、カイがいなくなった事に漸く気が付いた。
「ったく・・・カイにしろ、夕鶴にしろ、二人ともマイペースなヤツだよなぁ」
「うん・・・」
そう言いながら、二人は深い溜息を吐いた。
「おい。待てよ・・夕鶴!」
「・・・なんだよ?」
いつまでも追いかけてくるカイに、夕鶴は迷惑そうに振り向いた。
やはり、まだ機嫌は直らないようだ――――・・・。
「お前。まだ怒ってるのか?」
「・・・当たり前だ・・・っ」
「あれは・・・その・・だから・・・」
必死に言い訳を考えるカイに夕鶴は溜息をつくと口を開いた。
「・・・どうせ、慶介達になにか言われたんだろ・・・?」
「・・・へ?」
「いつも事だろうが・・・。特に翔太は人をからかうのが好きだからな・・・」
「ゆ、夕鶴・・・」
「なんだ?」
「あの・・・俺は・・・」
カイが言葉を発しようとした瞬間だった―――・・・。
昼休み終了のチャイムが鳴った。
「「ア・・・」」
「カイ。教室戻るぞ」
「あぁ・・・・」
急いで廊下を歩く二人。
不意に、夕鶴が口を開いた。
「別に、俺はお前の事嫌いではない・・」
「え?ゆ、夕鶴・・・?」
「馬鹿、勘違いするな・・・。友達としてだ」
「・・・あ、あぁ・・・」
夕鶴の言葉に心を少し痛めた自分が恥ずかしくなってしまう・・。
だが、自分の事を嫌っていないという事を聞かされ、引き換えに安心を覚える。
そんな時、二人は教室へ入った。
そして、午後の授業とHRも終わり、下校時間になった。
カイと夕鶴は話しながら階段を下りていた。
カイが階段を全て下り終え、夕鶴も後少しで下り終えるそんな時だった。
左側の上履きの靴紐が解け、もう片方の足で紐を踏んづけてしまい、
夕鶴が躓き、そのまま落っこちてしまう。
「うわっ!」
「!ユウヅ・・!?」
夕鶴が小さな悲鳴をあげ、カイが振り向くと、夕鶴が前から落っこちてくる。
混乱し、どうすれば良いのか迷うカイ・・・。
そのまま落下する夕鶴・・・。
ガバッ―――・・・・!
落下した夕鶴を見事受け止めるカイ。
それと同時に、二人の唇が触れ合う・・・。
そして、そのまま一回転してしまう。
そんな光景を見ていた、周りの人々が、
あまりに見事な出来事に、大きな拍手をする。
そして、当の二人は―――・・・
「「ゲホッ・・・ゲホッ・・・」」
暫く止まると、二人は一斉に咳き込む。
恐らく、先程の衝撃でお互い胸などを強打したのだろう・・・。
「ゆ、夕鶴・・大丈夫か?」
「・・あぁ・・す、すまない・・」
「いや。大丈夫だ」
そう返事を返すカイを、チラッと、夕鶴が見る。
その瞬間に夕鶴の顔がボンッと、真っ赤に染まる。
そして、震える手で自分の唇にそっと触れてみる。
そんな夕鶴の行動にカイは不思議に見つめる。
「如何した?夕鶴・・・・」
「あっ!・・な。なんでもない・・」
「?そうか?」
「あぁ・・そ、それより何時までくっ付いてんだっ!」
「あ。悪い・・」
助けてくれた恩など忘れ、そう叫ぶ夕鶴にカイが慌てて彼を放してやる。
夕鶴を放すと、カイはボーっと、先程こった事を思い出し唖然とする。
そういえば、夕鶴を受け止めた時、一回転してしまい、
その瞬間に、夕鶴の足が宙に浮いていたような気がした。
そして、何よりも、夕鶴の体が物凄く軽く感じた。
現在の夕鶴の身長は確か、165センチ位・・・。
自分と10センチ程小さいが、此処まで軽いと、流石に驚いてしまう。
そんな事を考えていると、夕鶴が話しかけてくる。
「おい・・カイ!」
「ん?なんだ?」
「な、何にも覚えてないよな?今さっき起こったこと・・・」
「は?な、何にも・・って・・・お前が落下してきて受け止めた事ぐらいしか・・・?」
「その他は!?」
「え?何にも・・・」
カイの返事にホッと胸を撫で下ろすと、慌てた口調で口を開いた。
「わ。悪い・・・俺先に帰る・・っ」
「え?・・お、おい!夕鶴・・・!?」
小走りでその場を立ち去る夕鶴の背中を不思議そうに見つめるカイに、
近くに居た友人の翔太が彼の肩を叩いた。
「ん?あ。翔太・・・」
「お前、夕鶴とキスしただろ?」
「は?何言って・・・」
「馬鹿・・気づかなかったのかよ?
さっき、思いっきりチューしてたぞ」
「え?え?・・・えぇ!!?」
翔太の言葉に動揺が隠せず、叫んでしまう。
そんなカイを、横目に彼は口を開く。
「夕鶴のあの感じだと、きっと、あいつ、ファーストキスだぜ?
・・・・ラッキーだったな。カイ?」
「ファッ・・・き、キ・・って!お、おい!翔太・・・っ」
そういえば、言われてみれば、夕鶴を受け止めた瞬間、
唇から、何やら暖かく柔らかい感触が伝わったような感じがした・・・。
―――っと、言う事は、あの感触は夕鶴の唇・・・。
翔太の言った事は間違っていないようだ・・・。
カイは少し顔を赤くすると、翔太を横目で睨み、
そして、もうその場を立ち去った夕鶴が走っていった廊下を見つめる。
先程、顔を赤くして自分を見つめた夕鶴の顔が忘れられない・・・。
やはり、夕鶴は可愛いと・・・
愛しいと思った・・・。
やはり、この気持ちは、ただの友達を思う気持ちではないのだろう・・・。
きっと、この気持ちは、「恋心」と言うのだろう・・・。
そして、初めて自分に「恋心」が出来た事を「初恋」と言うのだろう・・・。
カイは今、始めて自分の初恋の相手が解った様な気がした。
「(ファーストキス・・・か・・・。実は俺もそうだったんだよなぁ・・・
この代償は、必ず取ってもらうからな・・夕鶴・・・)」
そう。心の中で夕鶴に言うと、カイは薄く微笑み、自分もその場を立ち去った。
深波カイ、13歳。
中学2年の初夏・・・。
今日。初めて「初恋の相手」を見つけた。
必ず、その相手を手に入れてみせる・・・。
この先、どんな困難が待ち受けていようがと・・・。
俺達はまだまだ、思春期のど真ん中―――・・・・。
<END>
**後書き**
っと、いう事で終わりました。
最後まで、お付き合い有難う御座いました!
なんだか、今回は。初々しい(?)感じな二人を書きたくなって、書き殴った一品です。
っと、言う事で、この設定では二人は中学2年です。(通常設定から、約3年前設定です)
何て言うんでしょうねぇ・・・なんつ〜か・・・
中学2年って、「思春期のど真ん中!」――て、感じがしませんか?(笑/全くしません)
あの「君を思うほどに・・・」では。カイが夕鶴を恋愛対象として見始めたのが、
たしか、中学3年から・・・ッと書いてありますが、
「1年も差があるじゃん!」っとか、言う突っ込みは無しでお願いします・・・
まぁ。これは、「カイが薄々と夕鶴が好きになって行く」・・・ッと言うのが、メインなので。。。(はぁ?
っていうか・・この時期の夕鶴って思いっきり不良だったのすっかり忘れてた(汗
ま、まぁ・・・良い・・か・・・・(殴!/よくない!!
まぁ。夕鶴の場合。不良は不良でも、勉強できるんだけどね・・・
(勉強しなくても成績はトップクラス・・この子、凄いわ!(汗))
でも、中学時代のカイと夕鶴を書くの、案外楽しかったです。(笑
そして、現在の俺も、思春期のど真ん中☆(←大嘘です。)