沈んでゆく秘密




俺を求めてくれる「彼」が俺の想う「彼」だったら、どんなに良かっただろう・・・。

それでも、俺を求めてくれる「彼」は「彼」とは別の人間で・・・。

コレも、全て俺の自分勝手な欲情・・・。








「夕鶴」
後ろから抱き寄せられ、優しく名前を呼ばれる。

低くそれでも柔らかい声・・・

そして、決して「彼」のものではない声・・・。


自分を抱きしめているその腕も、体温も「彼」の物ではない、別の人間のもの・・・。

求めてはいけない存在だと解っているのに、求めてしまう・・・。
自分を求めてくれている「彼」ではない、別の「彼」を・・・。

藍色の髪と銀色の瞳を持つ彼の存在を―――・・・



勿論。彼が自分を見てくれるはずがない事は解っている。
だって、彼は・・・・

彼は彼女のことが好きだから・・・
自分と同じ黒髪を持ち、清楚で笑顔が似合う少女・・・
神橋絵里奈―――・・・・
彼は彼女の事を想っているから・・・


だから、絵里奈と似た黒髪の自分に好きだといった・・・。
彼は自分に絵里奈の面影を重ねようとしたんだ。
自分が彼女に似ているから―――・・・・。


「夕鶴?」
「!」
もう一度呼ばれてハッと、顔を上げる。
すると、俺の目に映ったのは、薄茶色の髪と眼鏡の奥の心配そうな瞳だった。


「何を考えてるんだ?」そう、聞かれて俺は何も答える事が出来ず、ただ俯く事しか出来なかった。


「カイくんの事か?」
その言葉に俺は体を小さく強張らせた。
やっぱり、この人には解るんだ・・・。
この人に隠し事など出来ない。


何も答えない俺に、彼は、晴樹兄さんは更に強く俺を抱きしめ、
そっと、俺に口付けた。

深く口付けられ、暫くして互いの唇が離れると、
晴樹兄さんは俺の耳元で囁いた。


「もう何も考えるな・・・お前は俺の傍に居るだけで良い」


何も考えなくて良い・・・本当にそれが出来るのなら、どんなに楽だろうか?
どんなに救われるだろうか・・・?


・・・そう。想ったのと同時に冷たい涙が俺の頬を滑り落ちた。


こんな辛い思いするのなら、感情なんか・・・いらないのに―――・・・・。


                         <END>

<あとがき>

2007年初の読みきりです。
もう小説というレベルを超した短く駄目丸出し文章です。
文章ともいえるのかも不明・・・・。
こんな感じで今年もやっていきますが、
これからもよろしくお願いします!
2style.net