虚ロニ輝ク月



「お前が来てくれて嬉しいよ。夕鶴」
時刻は深夜の12時を少し過ぎた所。
常磐大学病院のとある診察室に夕鶴と晴樹が居た。
もう診療の時間は疾っくに過ぎている時間帯だが、この日、晴樹は泊りがけの残業で家に戻れないで居た。
そんな時、夕鶴がやってきたのだ。



「しかし、どういう風の吹き回しだ?抱いてくれなんて・・・
前はあんなに俺に抱かれるのを嫌がっていたのに」
「・・・別に」
自分の言葉に視線を逸らせそう答える夕鶴に何かを悟ったのか、晴樹は問う。



「カイくんと何かあったのか?」
晴樹の口から出た「カイ」と言う名に夕鶴の肩が揺れる。
どうやら図星だったようだ。
そんな夕鶴の様子に晴樹はクスクスと笑い出す。
笑い出した晴樹を睨むと夕鶴が口を開いた。



「別にカイとは何もない。ただ・・・」
「?」
「両思いでなくとも、セックスぐらい出来る・・・そうだろ?晴樹兄さん」
淡々とそう言う夕鶴に晴樹は黙り込むが、暫くして軽くため息を吐くと、
その口元に笑みを浮かべ言う。



「お前も悪い子だな・・いつからそんな子になった?」
「・・・」
「まぁ、良い。こっちに来なさい」
手招きをされ夕鶴は晴樹に近づく。
近づいてきた夕鶴の腕を引くと簡単に彼は晴樹の腕の中へ入る。
夕鶴の長い漆黒の髪を優しく撫で彼の唇に口付けを落とす。
最初は触れるだけの優しいものから次第に激しいものへと変わってゆく。
深く深く口付けられる度に熱が上がっていく。
「っ・・ぁ」
いつの間にか晴樹の手がワイシャツの中に入れられ、撫でる様に愛撫されては小さな声が漏れる。
その夕鶴の反応に晴樹は小さく笑った。



唇を離すと夕鶴を抱き上げ診察台に押し倒す。
下肢を抱え上げられ間然に乗り上げた状態になる。
診察台といえど、下は硬くて骨が当たり痛い。
カチャカチャと金属のバックルを外す音が聞こえてきた。
―――あぁ・・・俺はもうじき彼を、カイを完全に裏切ってしまう・・・。
自分から晴樹を求めたのにも関わらず、そんな感情を抱いてしまう自分を愚か者だと思った。
そんな事を虚ろに思っているとやがて晴樹の顔が近づき・・・
「ぁっ・・・ああっ!!」
熱く硬い物に突きぬかれ、羞恥心に焼かれそうになりながらも派手に声を上げる。



もしも、カイがこの事を知ったらやはり自分を許さないだろうか?
それとも―――・・・・?
追い上げられ掻き回されるたびに生み出される快感と痛み。
それを感じるたびに夕鶴は晴樹の背中に爪を立て、
同時に快感からなのか苦痛からなのか訳の解らない感情で涙が流れる。



「っ・・・いいよ、夕鶴」
「んっ・・ふぅっ」
熱に浮かされ頭が朦朧とする。
そんな時。晴樹が再び自分に口付けた。
深く口付けられ、口内を侵される度に涙を流す。



「あっ・・・・ヵィ・・っ」
熱に浮かされた為、無意識に出た夕鶴の言葉は確りと晴樹に聞こえていた。
そんな彼に、晴樹はクスクスと笑い出した。
突然笑い出した晴樹に夕鶴は不思議そうに彼に視線を向ける。



「全く、抱いている相手に他の男の名で呼ばれるなんて初めてだよ」
「・・・」
晴樹の言葉に夕鶴は何も言えず黙り込んでしまう。
そんな時、ふっ、と、晴樹が口を開く。



「なぁ、この際。本当に俺のモノにならないか?」
「・・・俺はカイのモノだ」
「だが、今は違うんだろう?」
そう言葉を発した瞬間、夕鶴の瞳が揺れたのを晴樹は見逃さなかった。
優しく夕鶴の頬に触れる。



「俺のモノになれ、夕鶴・・・俺ならお前に辛い思いをさせたりも絶対にしない」
そっと触れる晴樹の手。
その手の暖かさにそっとその瞳を閉じる。





嗚呼、本当にこの人のモノになれば、自分は救われるのだろうか―――・・・?
ずっと、この人は自分を愛してくれるのだろうか?
いっその事、この人が彼だったらどんなに良かっただろうか・・・。




そんな愚かな考えはより一層涙を増やし、
溢れる涙は閉じた瞳から零れ落ち頬を滑り落ちた。
そして、虚ろ気な瞳を開くと、窓から虚ろに光を射し続ける月が視界に入った。
―――まるで、今の夕鶴の心のように、その月はぼんやりと、虚ろに輝いている。





診察室の窓から見えるのは、虚ろに輝く月。
その月から放たれる月光が二人を照らし続けた。


                         <END>

<あとがき>

超久々なハルユヅ(晴樹×夕鶴)の読みきりです。
しかも、ブラックな夕鶴が降臨してます。(ひゃぁー;;;
私の場合、受け側がブラックになるって、草々無い事なのですが、
何故か今回はブラックな夕鶴を書きたくなって書きなぐった一品ですOrz
・・・・でもまぁ。これでもう暫くはブラックな夕鶴くんは出てこないと思います。←
まぁ、要するに、ハルユヅは決して幸せに離れないと言う訳で・・・(それもそれで問題。
―――っと、言う訳で、お付き合い有難う御座いました!
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